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作品のご紹介&感想 激辛、年上、学生、体から系をリクエストしてくださったお客様、長らく長らくお待たせ致しました。多少変則的ではありますが、それらの要素が全てつまった
オンライン小説のご紹介であります。
ネットに男装ヒロインの
恋愛系オンライン小説は数あれど、なかなかその設定が自然に感じられる作品はそうありません。もちろん、事情があって性別を偽る系の作品は、その不自然さがまたおもしろくもあるわけですから、つじつまのあわない部分に目をつぶるのはいわばお約束ですが、それでもそれがこと現代を舞台とした作品であると、どうしても、その不自然さ、設定の甘さ?が気になってしまうことがよくあります。
なにしろ進学就職のもろもろに住民票の添付が必須である現代社会では、誕生の時の戸籍からして男性として届け出ない限り、世の中を欺く?のはまず不可能です。某有名漫画のように性別を偽っての転入学など、できるはずがありません。一目でその性差を見極められる発達した鶏冠(とさか)があるわけでも鬣(たてがみ)があるわけでもなく、他の哺乳類のように異性を嗅ぎわけられるほど嗅覚が発達しているわけでもない人間にとって、性器以外で性を見極められる外見的な特徴と申せばズバリその肉付き、つまりは乳房も含めた脂肪の付き方だけです。それは他の動物から比べればわかりやすいとはいえなくとも、人間という種の保存のため、交配可能な対象を見誤らないために自然が与えた希少かつ絶対的な外見上の差異ですので、胸の膨らみを隠しただけで、そうそう偽れるものでもありません。
そうした特徴が初めて、そして最も顕著に現われるのが男装のヒロイン世代、つまり第二次成長の頃であります。生物学的にいえば、人間の第二次成長期とは、いわば性別に関係なく育つ子供時代に決別し、大人、つまり生殖可能な個体となったことを周囲、特に異性に盛んにアピールしている時期ともいえるわけです。性差=脂肪の付き方(多さ)であると自然が定めたのであれば、二十歳前のこの時期が、出産の前後を除けば生涯で女性が最も太っている時期であるのも頷けます。その真っ只中にいるこの年頃の少女の体は、自然の摂理でその性を主張するために、ほっておいても脂肪がつくようになっているわけですから、栄養失調状態でもなければ、性を偽って見せるのは至難の業です。
遠い昔、中学時代、女子しかいない演劇部が、果敢というか無謀というか、全員が男子学生に扮して劇を上演したことがあります。お遊びの部活動でしたが、かの有名なギナジウム漫画から脚本を起してその1シーンを演じたわけです。期待して見にゆきましたが、結果は無残なものでした。お遊びとはいえ演劇部だけあって、そこそこ綺麗な少女もいましたし、痩せている子やまるで小学生のように幼く見える子も出演したのですが、20人余りの出演者のうち、一人として少年に見える人物は見当たらず、その時、あらためて、宝塚のすごさを実感したものです。宝塚の男役や歌舞伎の女形が、舞台の上で男性以上に男性らしく、女性以上に女性らしく見えるのは、本来の性を凌駕するほどの仕草と動作を訓練で意図的に身につけたからこそであり、髪の短い女の子がただ男子の制服を来て、それらしく乱雑に振舞って見せても、滑稽で奇妙なだけで、決して少年には見えないのだということがよくわかりました。
男女の性差とはそれほどまでに決定的なものであると私は思います。性差がほとんどみられない子供時代の後だからこそ、それが現われ始める第二次成長の頃の性差は著しく、どれほど痩せている少女でも、その体に見合った丸みや曲線は持っておりますから、それはその性を主張し、少なくとも性別を見誤られないという役目だけは果たしています。現実的に考えてこの時期の健康な少女の体を薬物を使わずに少年に違えて見せる方法があるとすれば、否応なく増えて脂肪を、アスリートばりの筋肉に変え、体の線を男性のそれに近づけていくしかないと思います。
能書きばかりたれて申し訳ございません。前置きが随分長くなりましたが、男装ヒロイン作品を読むたびに、心密かに上述した事などをつらつら思い浮かべていた私メでありましたからこそ、本編にはおおっと、うなってしまったわけであります。さて、本編のヒロインは、ボクシングに青春をかけた少女であります。亡き父親への強い憧憬ゆえに、幼い頃からボクシングに親しみ、自身がリングに立てなくとも、ボクシング部のマネージャーとして、選手たちと同じようなトレーニングや減量をこなしてきたわけです。そういう少女であれば、その外見が少年と見紛うものであっても不思議はなく、このユニークかつ説得力のある設定に私はまず唸り、通り一遍の男装ヒロイン作品にはない新鮮さを感じずにいられませんでした。しかも、説得力とリアリティのある筆運びは、その設定だけには留まらず、魅力的なキャラ、ドラマティックなストーリー展開にも存分にそれはふるわれております。
ヒロインを愛することになる二人の男性も、それぞれが存在感がありましたが、やはり一番魅力的だったのはヒロインの勇利です。他にはちょっとお目にかかれないような個性的なヒロインであり、その気性も、言動も、非常に新鮮で、鮮烈に感じられました。庶民ではあっても、凡庸な在り方とはある意味外れている少女ではあるのですが、その外れ方?に説得力がありました。その突飛ではあるけれども、作中、不自然さや違和感を感じることはない説得力のある外れ方?に、読者として感情移入せずにはいられません。性的な意味では無垢とは云えないヒロインですが、その精神と心根には手垢のついていない純粋さと潔癖さ、健全さを持つヒロインでありまして、その落差あればこそ、一層彼女が健気で痛ましく感じずにいられず、彼女と作品にのめりこまずにいられませんでした。イイ子なんですよ、このヒロインが!
全編、丁寧で簡潔、とても読みやすくわかりやすい文章で、安心して読み進むことができます。彼女をめぐる二人の男性視点の
オンライン小説 【
Pain】【
彼女】は、
本編中では語られなかった彼らの心情が綴られ、全く様相が変わった別作品のように楽しめますので、本編読了後にぜひどうぞ。特にPainは、ヒロインを愛する青年のじれじれな身もだえ?調が最高です!本編中に割愛された18Rシーンが描かれた【
Pain〜蜜月〜】【
Left Alone ~蜂蜜色の時間~】もまたお薦めです。本編ではあまり筆をさかれておられませんが、この作者さまの描く官能的なシーンは必見(必読?)でありますよん♪
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