天空の彼方
GENRE : オンライン小説 恋愛小説非R18 R指定なし
SITE NAME : .天上の藍 http://taiyomoo.sakura.ne.jp/
MASTER : 石田累 様

CAUTION :




STORY :
旧来の人類を超える頭脳と能力を持つ新たな人類「ベクター」が出現した近未来の世界。彼らは少数ながら、そのヒトを凌駕する能力と優勢な遺伝子ゆえにヒトから怖れられ好奇と偏見の目にさらされていた。
そんな中、一触即発で隣国との戦争の危機に面している日本では、新型母艦オデッセイが様々な思惑をはらんで史上初の天空の要塞として打ち上げられる。
オデッセイのオペレーションルームの室長、実質上の艦の最高責任者は、人形のような無機質で怜悧な美貌と頭脳を持つ若干27歳の右京奏。その傍らにには常に、彼女に婚約者を誤射された副官の揺堂と右京を護衛するべく警察庁から派遣された雇われSP蓮見がいた。オデッセイ要撃戦闘パイロットチームのリーダーは、女性ながら航空自衛隊のエースパイロット獅堂藍、彼女が慕う元教官の椎名、そして獅堂を庇護するように見守る元レスキュー隊の鷹宮の三人が選ばれる。右京はまた、オデッセイの搭載エンジンフューチャーの設計に携わったベクターである若き天才科学者真宮嵐を、周囲の反対を押し切って乗艦させる。父の遺志を継ぎベクターと人類との共存を模索する嵐は、両親が殺害されて以来、行方不明であった兄の楓とオデッセイで、再会することになる。
ベクターと人類。国と国。対立か共存か。迷走する世界で、それぞれの運命と思いは交錯し、恋人たちは出会いと別離を繰り返す。近未来SF恋愛ファンタジー。
作品のご紹介&感想
小正月も過ぎた本日ではありますが、今年最初のご紹介作品です。そして、大長編特集、当初の予定が大幅に狂ってしまいましが、続行させていただきます。長らくお待ちくださった皆様、本当に申し訳ございませんでした。<m(__)m>
ネットにおける恋愛作品で大長編作品であれば、本編をはずすわけにはまいりません。実をもうせば、本編をご紹介したいがゆえに大長編特集を企てたようなものです。ですから、先月サイトリニューアルのために、本編がネットから一旦下げられたときにはもう、大ショックでした。けれども、それが、こんなにもすばやく再公開されて、嬉しいったらありません!あんまり嬉しいもので、またも寝食を忘れて再読してしまいました。いやぁ~、何度読んでも、超絶におもしろい作品であります!無人島にオンライン小説を一作品だけ持ち込めるとしたら、私メ、本編を絶対候補に入れます。とにかく、大長編、名作、大作という呼び名がこれほどふさわしい作品もございません。これほどまでに壮大なスケールとロマンスを兼ね備えたオンライン小説は他になく、今後も存在しえないであろうと趣味を同じくする我がメル友が語っておりましたが、全く同感であります。壮大なスケールといい、読み応えたっぷりの内容といい、それを見事に描ききった筆力といい、とにかく、すばらしい作品です!
優れた大長編作品でありますから、見所?読み所?はもうわんさかあるのですが、それだけに、今回は、STORY(あらすじ)をどうご紹介してよいか悩みまくりました。書いては消し、消しては書き、半日を費やしながら、結局あれです…(^_^;)あれで?というつっこみはどうぞご勘弁くださいませ。なにしろ、第一部はそのほとんどを、空中母艦オデッセイを舞台としております。魅力的な軍人キャラが多数登場し、彼らが艦上で出会ってドラマが始まるのは間違いないのですが、私メの下手なご説明で、未読の方が、本編を、アニメやゲームでよくある戦艦系?作品の類であると誤解なさり、敬遠されてはとそれがかなり心配であります。
もちろん、魅力的なヒロインが男性優位の軍人社会で、男性顔負けの活躍をする胸がすくような面白さがある作品であることは確かですが、本編は戦闘活劇系の作品ではなく、物語の舞台は艦上や軍隊に限られているわけではないのです。むしろ舞台を下界?に移した第二部以降は、キャラの職業が軍人であることが物語に独特の個性と魅力を加味していることは変わりなくとも、恋愛作品としてのおもしろさが、俄然ヒートアップされてくる作品であります。
ヒロインは二人です。一人は右京奏、現職総理の令嬢という背景もさることながら、その卓抜した頭脳と能力で異例のスピード出世を遂げたワーカーホリックのクールビューティー。いま一人は天才的な女性戦闘機パイロットにして航空自衛隊のトップガン獅堂藍。この二人のヒロインが甲乙つけ難く、最高に魅力的です。二人が二人とも、特出した能力を発揮して任務を果たしてゆくでありますが、こと仕事を離れ、一人の恋をする女性として恋人の前に立った時の落差、その不器用さといじらしさ、可愛らしさに、私メ、同性ながらヤラレテしまいました。そのわざとらしさのない、滲み出るような自然な魅力、このあたりはもう作者さまの巧さに思わずうならずにいられません。もちろん、そんな彼女たちの魅力にヤラレテしまうのははっちだけではありません。彼女たちを取り巻く魅力的な男性陣の中で、果たして誰がこの二人のヒロインとカップルになるのか、それを語ってしまうと、お読みになった時の楽しみが減ってしまいますので伏せさせていただきますが、個人的には、ヒロインに献身的な愛を捧げぬいた優しくも屈折したさる男性キャラに、私メは号泣・慟哭・激ラブでありました。初読時、本編の終盤には、私メは二人の、と申すより彼の行く末を案じながら、本当にじりじりはらはらどきどきしながら、それこそ祈るように物語を読み進みました。それが誰であるかは、最終章まで読んでいただければ、おわかりいただけるかと存じますし、きっと私メと思いを同じくしてくださる方も多いはずです。とにかく、ヒロインたちだけではなくヒーロー達も、犯罪的?に魅力的なキャラが登場する物語であることは太鼓判であります。
初読の時は、とにかく、そのストーリー展開のおもしろさに目を奪われ、それこそ次ページをクリックするのがもどかしいほどの勢いで読み進んだので気がつかなかったのですが、再読させていただくとあらためて、この作者さまの凄さに驚きます。全くの未来社会でもなく、全くの空想異世界でもない、非常に現実社会に近いこの近未来のSFファンタジーという難しい題材の作品を書き上げるにあたり、この作者さまはどれほどの資料を調べ上げ、消化なさったのだろうかと思うと頭の下がる思いが致します。
大長編でありますので、第一部、特にその前半部分には、色々な意味で、伏線、布石が散りばめられております。近未来の世界を描いたSFファンタジーでありますので、物語の舞台背景・時代設定・SF的な展開について説明された記述もあります。その中で、本編のストーリー展開上で鍵となる設定を前もってご説明させていただきますと、その一つは軍事における「専守防衛」の原則です。つまり、現在の日本は他国から攻撃を受けてからでなければ、反撃できないと憲法で定められております。その善悪、良否には関係なく、本編の作品世界でも、「専守防衛」に基づいて、「専守防衛」ゆえに物語は波乱を呼んで動いてゆくわけです。
もう一つは、強い種だけが生き残り、弱い種は淘汰されていくという「弱肉強食」の法則への疑問です。グー・チョキ・パーのじゃんけんと同じように自然界においても、絶対的な優位種はなく、強者・弱者とは、所詮相対的・一時的な関係に過ぎないという、ベクターと人類との共存を目差した嵐と楓の父親の説として語らせております。軍事的には絶対的な優位を誇るアメリカが、それよりはるかに劣る軍事力しかない敵対勢力に対して、強者として勝利をおさめることのできない昨今の世界情勢を思えば、絶対的な優位者はありえないというこの説に頷かざるをえません。本編が公開され完結したのは何年も前なのでありますが、下敷きにした資料があったにせよ、作者さまの先見の明とも申すべき見識の深さにも、驚きを隠せません。
物語が動く以前、あるいは静止した状態での、こうした説明記述は難解にも退屈に感じられ、それを苦手となさる方も中にはいらっしゃるかと思います。けれども、どうぞ、騙されたと思って、読み辛い部分は、読み飛ばしてでも結構でございますので、せめて、第一部までは最後までお読みくださいませ。そこまでお読みになれば、本編の魅力も、また本編の物語世界の概要もわかっていただけるかと存じます。恋愛作品がお好きな方であれば、その先はもう、私メがお薦めするまでもなく、読み進まずにはいられないに違いありません。一旦本編の魅力に引き込まれれば、物語を読み進むうちに、当初は難解に思えた部分も、自然と理解納得できているはずですし、なにより、その後の説明記述も、本編の物語世界をより深く理解したいがゆえに、苦痛を感じずにむしろ興味をもって読むことができるはずです。
十代から二十代にかけては結構SFも読みましたが、私メは骨の髄から理系科目が苦手な文系人間であり、防衛軍事の知識もありません。ですから、もしも科学を得意となさる方、軍事に詳しい方やSF愛好家の方が専門的な見地から本編をお読みになった場合は、もしかしたら、本編の瑕疵や矛盾、説明不足や感じることがあるかもわかりません。けれども、私メは、常識の域を出ない範囲でしか科学や防衛軍事の知識はない、けれども平均的な読解力は備えている一般的な読者として、矛盾や奇異の思いを抱かずに、飽きずに、本編の作品世界を納得し、堪能させていただきました。人と人とのドラマ、恋愛作品としてのおもしろさ、卓抜した筆力は言うに及ばずでありますが、近未来SFファンタジーとして本編を描き上げ、成り立たせた説得力と、そのために作者さまが費やしたであろうご苦労とご成功に私メは改めて拍手を送りたいです。
どれほど言葉を尽くしても、本編の魅力を語りつくせるものではありませんが、読後の感想はまさしく感無量の一言でありました。初読は随分前でありますが、「天空の彼方」の物語世界が終わってしまうのがなんとも名残惜しくて、寂しくて、万感の思いをかみしめながらも、少しでも別れを引き伸ばしたくて、エンドロールの文字をゆっくり、ゆっくり読んだのを今でも覚えております。あの深い感動を、ぜひとも皆様にも味わっていただきたいと心から願わずにいられません。
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