銀 の ム テ 人
GENRE : オンライン小説 恋愛小説非R18 R指定なし
SITE NAME : 「姫 様 御 殿」 http://loyrie.web.fc2.com/
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MASTNER : わたなべ りえ 様

CAUTION :


STORY ;
ムテ人は、魔族の中で最も長命を保つ種族。
祈りの力を持ち、心話に優れ、様々な才能を持つ。
さらに、銀の瞳と銀の髪を持つ美貌の種族であることから【銀のムテ人】と呼ばれている。
だが、その能力と血は衰退し、今は滅びの道を歩んでいる。
ムテの霊山に籠る最高神官の祈りと、
地方に散らばる神官たちの受けの力がなければ、
とっくに滅んでいたことだろう。
ムテの霊山に篭り、自らの寿命を魔力にかえて
ムテを守り続けることが出来る最高神官は、
ムテでは失われてはならない貴重で高貴な存在だった。
最高神官の優れた血を残す手段として、
三百年以上続いている巫女制度は、
濃い血をあらわし、かつ子供を産める状態にある者を、
巫女として神官に捧げて、子供を作るという制度であり、
巫女に選ばれることは、女性としてもその一族としても名誉なことだった。
代替わりした最高神官サリサの初めての巫女姫として選ばれたエリザ。
だが、初めての夜を過ごす相手を、彼女はよく知らない。
――作者さまによる紹介文ならびに作中より一部抜粋
作品のご紹介&感想
「銀のムテ人」はこの作者さまのライフワークともいうべき、エーデムリングの世界を描いた作品の番外編とあります。私メがこの作者さまの作品で一番最初に読ませていただいたのがこの「銀のムテ人」でありまして、その時はエーデムリング本編主流シリーズは未読であったのですが、全く問題なく楽しませていただけました。まあ、そこからはなしくずしにエーデムリングの世界にはまっていったわけでありますが…(^_^;)ともかく、作品の舞台は同じくしておりますが、ネタバレもほとんどないので独立した作品として楽しませていただける作品ですのでご安心くださいませ。
本編・番外編を含めてのエーデムリングの作品シリーズ全体では膨大なページ数となることはもちろんですが、この「銀のムテ人」単独だけでも、充分大長編の名を冠するふさわしいページ数を有しております。読み応えはたっぷりの長さでありますが、6年に及ぶ連載中、週に2回の更新ペースを乱すことがほとんどなかったのですから、すごかった!ネットで公開された作品がその完結を迎えることがいかに難しいか、連載中の作品の更新が滞ることがいかに多いか、オンライン小説ファンの皆様であればよくよくご存知でいらっしゃいますでしょう。オンライン小説ファンにとって更新を待つのは楽しみでもあり嗜みでもありますので、私メもほれ込んだ作品であればたとえ1年であろうが2年であろうが、楽しみに待たせていただきます。けれどもそれはそれとして、決まった日に確実に作品の続きが読めるという安心感と有りがたさは格別でありました。
一般的に、連載が長期にわたり、ページ数が膨大になるにつれて、作品の知名度も上がり、ファンの数も増加していくことと思いますが、長期間の生連載ゆえに作品が疲弊し荒れてくる、あるいはそれを避けるために、あえて更新を中断するということもネットの世界ではよくあることです。そして、その中断が何年にも渡った凍結してしまった作品も少なくないのは周知の通りです。作者さまにとって、一つの作品のモチベーションとレベルを長期間維持し続けるのは並大抵の事ではないと存じます。だからこそ、長期の連載中、作品としてのレベルとコンスタントな更新を維持し続け、大長編を完結なさった、この作者さまの筆力と、作品と読者に対する真摯でご誠実な姿勢、自己管理能力には本当に頭が下がる思いであります。対価こそ得ていないものの、この作者さまは、言ってみれば、オンライン小説作家としての「プロ意識」をお持ちであるに違いなく、この作品は、その賜物であったと私メは思います。
長命なだけに成熟の遅いムテ人―という設定そのままに、主役の二人は長い長い時間をかけて、この甘く切なくじれったい、そして時に限りなく残酷にも思える長い長い恋の物語を紡いでゆきます。非常に読みやすい平易な文章で書かれた作品であり、物語の導入部では精神的に幼さが抜け切らないヒロインでもあったので、性的な関係が先行するストーリーとは申せ、内実は、メルヘンチックで初々しい恋物語かと、当初は思い込んでおりました。けれども物語が進むにつれて、徐々に決してそれだけの物語ではなかったことに気づかされてゆき、それはとても嬉しい誤算でありました。まさにアメと鞭とでも申しましょうか、甘やかなシーンやほのぼのしたシーンは、こちらの頬が緩むほど甘くほのぼのとしているからこそ、物語の中盤以降、二人に訪れる試練や悲劇、その残酷は痛ましく悲しく胸に迫り、だからこそ一層この物語に引き込まれてゆきました。
特に、物語の要所要所に地の文でさりげなく短く客観的に語られるキャラの心情が、私的には圧巻でありました。決して単純とはいえない人の心の有り様ですが、その核心を、平易な言葉でわかりやすく、リアリティと説得力をもってずばっと描いて見せるその様に、私は作者さまの冷静で大人の観察眼と洞察力、成熟した筆力を感じずにはいられませんでした。しかも、どれほどの人の暗部深部を描いても、感情過多に陥ることのないこの作者さまの作風のおかげで、読むに耐えないほどの陰鬱さや重さを感じることはないのです。どこまでも、読ませる力に秀でた作者さまであると思います。
この長い物語は、その好悪はともあれ、実に味のあるキャラが多数登場致します。大長編の醍醐味の一つは、多くのキャラを登場させ、彼らを生き生きと個性豊かに描くことで、物語に大長編ならではの奥行きと魅力を加味できることであると思いますが、そういう意味でもこの作品は成功していると思います。彼らの視点で語られる話も多く、それらが短編として完結し、連動し、集合してこの長い物語を形作っておりますので、大長編とは申せ、飽きることもなく、読みやすい作品でありました。
作品の舞台はエーデムリングというバリバリ?のファンタジー世界でありますが、剣や魔法がさほど幅を利かせた作品ではありません。物語の基盤である「最高神官」と「巫女制度」の設定さえ呑み込めた方であれば、魔法系のバリバリファンタジー作品が苦手な方であっても、恋愛作品がお好きな方であれば楽しませていただけるのではないかと思います。作者さまが作り上げ紡ぎ上げたエーデムリングの世界は非常に魅力的なファンタジー世界でありますが、私メは「銀のムテ人」とその後に続く物語を、この特異な空想世界だからこそありえた、懊悩し葛藤する切ない恋人たちの物語として楽しませていただきました。
第4幕で完結する「銀のムテ人」のその後の物語は、舞台や主役が代わって、先に発表されていた「漆黒のジュエル」へと続きます。そのため、「銀のムテ人」の最後と「漆黒のジュエル」の冒頭が時系列的には多少被っております。「漆黒のジェエル」もおもしろい作品ですが、長編ですし、「銀のムテ人」ほど恋愛要素は濃くありません。サリサとエリザのその後は気になるけれど、「漆黒のジェエル」をパスなさりたい方は、かなり時間的な経過があるのですが、番外編「春うららかに」をどうぞ。二人の長い恋の物語はそこで本当に終わりを迎えます。
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