「ハダカの万葉」シリーズ
GENRE : オンライン小説 恋愛小説非R18 R指定なし
SITE NAME : 薔 薇 図 鑑 http://ip.tosp.co.jp/i.asp?I=sweetreaction
MASTNER : 七 生 様
CAUTION :


STORY ;
夢の中にしか存在しない 美しい星のように
彼の色素の薄い茶色の瞳は キラキラと輝きながら 私を見つめていた。
ごく平凡な少女、万葉
「友達はこんな風に抱き合ったりしない」端正な義理の兄、和司
「寂しいんだ。今夜だけ側にいてほしい」
太陽に似た美少年、薫
「奪いたいよ、お前のこと」屈折した美貌の天才、密
「僕に涙は逆効果だ」
薔薇が咲き誇る館で 揺れる万葉の心――ハダカの万葉・Ⅰ「薔薇が咲き誇る館で揺れる万葉の心」 表紙より
作品のご紹介&感想
大長編特集、最後のご紹介作品であります。万葉と書いて「まんよう」ではなく、「マハ」と読みます。同じ構図、同じモデルで2作を描いたことで有名な、かのゴヤの名画より名づけられたヒロインであります。本編はバリバリ?の携帯サイト作品でありまして、パソコンでも閲覧可能ではありますが、如何せん、1ページ当りの文字数が極めて少なくパソコンサイトの作品に慣れた方には、かなり読み辛い部分もあるかと存じます。しかしです、文章は読みやすくわかりやすく丁寧で簡潔です。そのため、小さな画面であることを気にせずにスイスイと読み進むことができましたし、作品の中身内容は、携帯小説は雑な作品が多くて楽しめない―という私メの先入観をひっくり返すほどの読み応えがございました。とっても、おもしろかったです!
さて、上述のSTORY は、常であれば、作品のあらすじを記させていただくのですが、今回は、キャラの紹介も兼ねていたであろう、本編の表紙部分からそのまま引用させていただきました。これをご覧いただければ、勘のよい皆様ならお気づきかと思いますが、本編は、女子高生をヒロインとしたオンラインの恋愛作品としてのお約束事を満載した作品であります。しかも、実に気持ちよく、見事なまでに堂々と、そのど真ん中、まさに王道中の王道を貫かれた作品なのです。
ヒロインは成績優秀だけれども一見平凡といってよい女子高生。この平凡というのがミソであります。平凡に見えるヒロインが本当に平凡なままで終わってしまったらおもしろいはずがない!母親の再婚で突然お嬢様ライフに突入してしまいながらも感覚はあくまで庶民。しかも、新しい家には眉目秀麗な義理の兄がいるというのもまたお約束。密かに憧れていた美少年と偶然の出来事から親しくなるが、彼には美人で我侭な幼馴染がひっついている。親友は勝気だけれど気立てのよいサラブレッドのお嬢様。恋の行方が危うくなって来た場面で、それをもっとかき回しそうな、スーパーゴージャスな第三の男性が現れる。とまあ、もうこれでもかというくらい、お約束、王道的要素てんこもりの設定であり、展開であります。
こうした作品は大抵の場合、ある程度読み進めば、ストーリー展開の予想がつく部分が多く、本編もそういう意味で読者の予想を裏切りません。先が読めてしまう物語のどこがおもしろいのかとおっしゃる方もおられるかと存じますが、それでも面白いものは面白いと申し上げるしかありません。なにしろ、皆様もご存知の通り、はっちは無類のベタ好き、王道好きであります。俗に王道とかベタと云われる要素は、誰がなんと申しても女性の好むツボのど真ん中を突いてくるのですから、こればかりはどうしようもございません。王道ベタを侮ってはなりません。よくある設定、予想がつく展開だからこそ、そこに作者さまの力量が表れるわけでありまして、王道は王道だからこそ、ベタはベタだからこそ、力量のある作者さまが描かれると、その作品世界はよりいっそう魅力的になるのです。
いくら女性好みの要素を盛り込んでも、ただそれだけでおもしろい作品になるはずがありません。なにしろ、王道ベタと言われる分野は、オンノベにしろ、少女漫画にしろ、ハーレーにしろ、はっきり申し上げれば、限りなく非現実的な女性の妄想ともいうべき(失礼!)ドリームを描いた世界であります。下手な料理の仕方では、女性のドリーム(妄想?)を題材としただけに、うんざりするほどうそ臭く、むず痒く、寒くなってしまいます。たとえて申せばそれは、トリュフとかフグとかフカヒレとか、世界的に美味とされているけれど、料理する人間に腕や技がなければどうしようもない高級食材と似ています。けれども、本編は、いわば、王道的要素という好まれるがゆえに扱いの難しい高級食材をふんだんに用いながら、作者さまがその筆力で見事に料理なさった、実に豪華なフルコースディナーともいうべき作品ではないかと思います。
真面目で、地味目で、けれども自分というものをしっかりと持っているヒロインも魅力的ですし、ドリーム要素満載の実にゴージャスで煌びやかな男性キャラもヨカッタ~。どれほど煌びやかなキャラを登場させようが、存在感がなければ、ただの絵に描いた餅、お飾りになってしまいますが、彼らは違いました。作中の彼らの言動は実に個性的で説得力があり、それはその容貌や背景以上に彼らを魅力的に見せていました。お約束的な出会いや展開が多いのは前述した通りですが、そこに不自然さは感じられず、予想はついても、会話や台詞の一つ一つがおもしろくて新鮮であり、引きこまれました。心理描写も、情景描写も、巧みな作者さまでありますが、特に、終盤間近い二つの情事のシーンは、恋人たちの瑞々しく切ないほどの情感が溢れるようで、強く印象に残りました。創作はみなそうでありますが、現実にはまずありえない物語を、いかにそうと思わせずに、夢から醒ますことなくその世界に引き込むことができるか否かが勝負。この長い物語を私メは、最後までどきどきはらはらしながら、本当に、心ゆくまで、お腹一杯、王道的恋愛ドリーム世界を堪能させていただきましたので、実に満足であります。
作品タイトルの「ハダカの万葉」でありますが、本編は、まさしく、ヒロインの万葉を描いた作品であります。私メは、第二部の終盤になってようやくこのタイトルの意味に思い当たりました。「ハダカの万葉Ⅰ・Ⅱ」は完結しておりますが、シリーズの続篇にあたる「n番目のリュカ 」が只今連載中であります。万葉という少女がどのような女性に成長し、そして最終的には、どういった人生を選択することになるのか、それはこの続篇によって明らかにされることになります。
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