花の昊天 (はなのこうてん)
GENRE : オンライン小説 恋愛小説非R18 R指定なし
SITE NAME : 「小説家になろう」 投稿作品
http://ncode.syosetu.com/n6721bu/
MASTNER : 椰 子 実(ココナッツ) 様

CAUTION :


STORY ;
下級貴族の娘として育った茉莉花(まつりか)は、十八歳。
母譲りに美しく育ちながら、若い娘にありがちな劣等感をもった少女。
出生の秘密をもつ彼女に、後見人である公子尹は
後宮へ花嫁修業へと行くように決めるのだが...。
―――作者さま作品紹介文より
作品の感想とご紹介
異世界中華風ファンタジー。市井の人々には知られていないが、先々代の皇帝の愚行のせいで、宮魔と呼ばれる魔の一種が根を張っている統の宮廷。宮魔のせいで命を落した妃も多いその後宮へ、本編のヒロイン茉莉花(まつりか)は、皇太弟の妃、蝶音の侍女として上がります。剣を愛する健やかで真っ直ぐな、それゆえに純な幼さが残る彼女は、半年間だけの花嫁修業という言葉を鵜呑みにしていたのですが、そこには本人も知らない周囲の深い思惑があったのです。
ヒロインの茉莉花は、官女であった母の美貌も受け継いでおりますが、それ以上に、無骨な武人である育ての父の気性を受け継いでいたようです。少女期特有のコンプレックスや不器用さ、生真面目さは、物語の当初、彼女を聊か、臆病で卑屈な少女に見せていましたが、物語が進むに連れて、本来の彼女の美点に光が当たり輝き出します。曇りが晴れ、次第にのびのびと生き生きと描かれる彼女の姿は、まさしく、本編のタイトルにある昊天【意味:大空・広い空】を見上げるようで、読んでいて実に気持ちがよく、私メは知らず知らずに彼女に魅せられてゆきました。薄皮が剥がれ落ちるようにその魅力が増してゆくのはヒロインだけではありません。私メと同じく、ヒロインに魅せられた二人の男性キャラも、ヒロインへの気持ちが大きくなるに連れてその言動と魅力がヒートアップしてくるものですから、連載中、私メは、毎日毎日、パソコンを開くのが楽しみで楽しみで…(^_^;)(なんと、作者さまは、本編もまた、脅威の連日更新を貫いてくださったのです!!)
物語の鍵となるのは剣と魔(魔法ではない)と琴曲。その重要度ははっち的には5:2.5:2.5(5対2.5対2.5)くらいでしょうか。剣も魔も琴も、作中、頻繁にでてくるのですが、その真の意味での重要度は、物語が佳境に入るまでは明かされません。特に、三番目の鍵(琴曲)は、最後の最後で、ああこういう意味があったのかと、ようやく気づくわけでして、このさりげなさが巧みでしかも切なかった…!とにかく、物語が進むにつれておもしろさと魅力が加速倍増していく作品でありますので、乞うご期待!
さて、ライトノベルという呼称が出版業界で使われだして随分になりますが、未だにその定義は曖昧であり明確には定まっておりません。直訳すると”軽い小説”となってしまうので、そう分類されることを嫌がるプロの作家も多く、最近では、ライトノベルという総称?だけではなく、ジュブナイル小説、ヤングアダルト小説などと、より細かくジャンル分けされているようです。細かく分けられても、正直どこがどう違うのかは私メはさっぱりわかりませんが、とにかく、この分野の作品の特色が、なによりもその読みやすさとわかりやすさにあることは確かであります。”軽い小説”という意味ではなく、"優れて読みやすくわかりやすい小説"がライトノベルの唯一無二の定義であれば、この作者さまは間違いなくライトノベルファンタジーの名手であると思います。
前回ご紹介させていただいた「落陽記」の時もそう思ったのですが、とにかく驚嘆すべき読みやすさ!若年層の読者が多いライトノベルの中には、大人が読むと物足りない、納得いかない、まさしく軽い小説的な難がある作品も多いのですが、本編はそれに当てはまりません。一つ一つの文章はとても短く簡潔なのですが、無味乾燥とは無縁です。なにしろ、一見、なんの変哲もない普通の文章なのに、そこに的確な語句がポンと入るだけで、突然じわっと情感が滲んでくるのです。時にそれは、官能的といってもよいほどでまさに逸品。
文章の秀麗さはその長短に関係はないとわかってはいるのですが、それでも、この少ない文字数で、どうしてこんなにも読む者の胸をときめかす、あるいはストンと落ちてくるような一文が書けるのかと、作者さまの言葉選びのセンスにはもう脱帽です。天性のものか、はたまた推敲に推敲を重ねた努力の成果なのか―どちらにしても凄いです。無駄がないのは文章だけに止まりません。一つ一つのエピソードは、テンポがよくスピーディーに、まるで映画のように移り変わってゆくのですが、なくともよいシーンは一つもありません。内容が浅いからでも幼稚だからでもなく、文章にも、ストーリーにも、無駄がないからこそ、読みやすくわかりやすくおもしろい作品とはまさに、本編のことを言うのではないかと思います。ココナッツ様の作品はこちら

ココナッツさんのマイページ
