幻想譚 「Villea」
GENRE : オンライン小説 恋愛小説非R18 R指定なし
SITE NAME : viscaria http://viscaria.ifdef.jp
MASTER : 汐 崎 雪 野 様 ご紹介作品一覧


CAUTION :



STORY ;
未曾有の飢饉がようやく終焉しようという冬の朝。
ヴィレア母子は森の中で
領主の若い息子パーシヴェルによって見つけられた。
母親はすでに息耐えていたが、我が子を守るために、
彼女が最後の力で掘った雪の下にいた赤子は生きていた。
以来、幼いヴィレアを慈しんできたパーシヴェルだが、
父たる領主をそれを喜ばない。
ヴィレアを厭う父から彼女を守るために、
パーシヴェルはヴィレアを手放すことを決める。
そして、時は流れる。
作品のご紹介と感想
立春もすぎ、暦の上ではもう春でありますが、北国在住のはっちの家の周辺には、まだそこここに雪が残っております。ご紹介の作品には、魔女と呼ばれた女性が登場することから、秋のメルヘン特集でご紹介することも考えたのですが、本編をより深く味わっていただくには、絶対に冬!しかも厳寒の真冬にこそ相応しい作品であると思い、その時は見合わせました。もたもたしているうちに、もう春三月は目前でありますが、二月ははっち的には、一年で一番冬を感じる時であります。梅や水仙がほころび始めた暖かい地方にお住いの方にはずれてしまって申し訳ないのですが、ぜひ、寒さ厳しい(とはっちが思う)この時期にこそ読んでいただきたい作品であります。
肌を指す凍った空気や、白い息とまっ白な冬景色、他のどの季節とも違う、深冷に澄んだ真冬の青い空がまざまざと蘇るかような、このすばらしい冬の物語世界を、ぜひ、ご堪能くださいませ。短編ですが、否、短編だからこそ、深~い世界です!!
本編は、ちょっとした入れ子構造?になっておりまして、読まれる方は、少しだけ、んっ?と思われる部分があるかもしれません。種明かしをしてしまうと、楽しみが減ってしまいますので、避けさせていただきますが、一つだけ。本編は、過去と現在が、読者にそうと気づかせないくらい巧みに、交錯し、展開してゆきますので、怪訝に思われたのは、そのせいであります。やがて、すぐにその謎はとけますので、どうぞご安心して読み進まれてくださいませ。
入れ子?になった過去編が私的には、最高でありました。身分違いの恋から身をひくために、ヒロインが他の男に自ら身を任せるシーンがあるのですが、男の肩越しに彼女が見つめる冬の空の青さがもう、胸にぐっときました。その冬の空とヒロインの瞳の色は同じであります。彼女の吐く息は白く、雪と氷に覆われた地はもっと白く、青と白の色は、本編を印象的に彩っておりまして、特に最後の一文でそれは一層鮮やかに、強く読者の胸に刻まれることになります。きわどい描写はほとんどないのですが、冬の冷気を常に感じさせる作品であるからこそ、その中で、恋人たちが刹那に心と体を熱く滾らせるシーンは、非常に官能的に思えました。
以前より、この作者さまの流麗な文章には心酔している私メでありますが、本編では、他の作品に見られる、詩のように修辞と韻を華麗に操った文章は使われておりません。一文一文が、これ以上短くはできないくらい短い、さながら、真冬の冷気のように、鋭く研ぎ澄まされた文章です。遊び?や無駄を排して、けれども硬質な美しさは有したまま、端的に淡々と綴られた文章だからこそ、読む側の胸に、痛いくらいぐさっと、直接入り込んでくるような情感と表現力がありまして、それがなんとも快感!
短編ながら、深く描かれたそれぞれのキャラは存在感があり、とても魅力的です。読者は、本編では直接語られることはなかった、その後ろにあった彼らのドラマや心情を想像することさえ難くないでしょう。登場する二組の恋人同士の恋は、全ての意味で対照的であり、だらこそ、それは相乗効果をあげていました。彼らがつむぐ、結晶のように凝縮されたドラマには引きこまれてしまうこと間違いなしでありまして、特に、短編スキ~な方にはタマラナイ冬の逸品であります。ご紹介の作品は、【完結済物語】⇒【2008】からどうぞ~
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