塔の中の姫君
GENRE : オンライン小説 恋愛小説非R18 R指定なし
SITE NAME : 夢 紡 ぎ の 歌 http://w6.oroti.net/~yumetumugi/
MASTER : 松木 響子 様

CAUTION :


STORY ;
姫君は産まれたときから、予言されていた。『父親を殺す者を娶るであろう』と。 それゆえに塔に幽閉された姫君は、父王への呪詛の言葉を吐きながら、自分を救いに来る勇者を、まだ見ぬ恋人を待っていた。 けれども、彼女を塔から解放したのは、夢見ていた凛々しい若者などではなく、獅子のたてがみのような赤銅色の髪をもつ、残虐な略奪者たちの王だった・・。 滅びの予言に翻弄された姫の物語。
作品のご紹介&感想
このオンライン小説の舞台は、古代ヨーロッパ、民族大移動の時代。ブリタニア(今のイギリス)に侵攻してきた、アングル族の王とケルト?の姫との物語。設定からしてドラマティックです。この時代の日本は大和朝廷の黎明期。日本は古事記以前の歴史は一応白紙ですから、歴史上では、他国からの侵略の歴史はない単一民族ということになっていますが、大和朝廷のルーツは大陸からの侵略者ではないかという説も有力ですから、こういう雰囲気ももしかして、あったのかもしれません。
短編ながらも、この荒々しく猛々しい、エネルギッシュな時代の息吹を感じる作品です。
生まれた時から滅びの予言に翻弄され、塔に幽閉されてきた、いわば、生きながら飼い殺しのような状態で日々を過ごしてきた姫君が、ある日突然、父王の命を奪った侵略者に解放され、激動の運命の中へ投げ込まれる。美しくたおやかな姫と、荒々しく猛々しい侵略者の王。姫は金髪で、アングルの王の髪は赤銅色。体格的にも、ラテン系やケルト系の民族に比べて、アングロサクソンのルーツとなったアングル族は、北欧の流れを汲むヨーロッパ人の中でも、ひときわ大きな体格だったはず。そのあたりの雰囲気も作者さまの巧みな人物描写から感じられます。また、おそらくは、かってローマの統治下でその影響を受けたであろうこの国にとって、アングル族は野蛮人としかみえなかったでしょうねえ。その対比もまたイイ!あらゆる意味で、対照的なこの二人がうまくいくはずがない・・!?
体を奪われた女の性か、妻となった後王を愛するようになった姫君を、王はわざと遠ざけ、この傲慢で野蛮な男は愛を否定し、姫君に自分を憎ませます。『そなたは、憎悪に燃えているときが一番美しい』この一言に彼の人間性や心情が凝縮されていますが、絶望した姫君は王の望みどおり、彼を憎み、呪いの言葉を残すのですが、その後・・・・。歪んでいるというか、究極のすれ違いですが、そこがはっち的にツボでした。(笑)
この時代、西洋と言えどもフェミニズムなどありません。日本のその時代と同じく、時代もそして男たちも荒々しく猛々しく傲慢で野蛮です。そしてだからこそエネルギッシュで魅力的ですが、女たちの性と人生は否応もなく男たちの支配下にありました。激動の時代というのは、そこで生きる人々にとってはたまったものではありませんが、時を経て見るには、その影が濃いからこそ光は一層まぶしくみえ、非常にドラマティックです。このオンライン小説は、そうした激動の西洋古代史の1シーンを印象的に切り取って見せてくれました。
王との初夜は乱暴なものだったという設定ですがそのシーンはありません。性的なシーンや性的な描写もほとんどないのですが、この時代と、そこに生きた一組の男女の姿として、非常にドラマティックで、だからこそロマンとエロスを感じました。
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