モロッコの薔薇
GENRE : オンライン小説 恋愛小説非R18 R指定なし
SITE NAME : 茅葺き屋根の家
http://homepage2.nifty.com/chigaya/
MASTER : 茅 (ちがや) 様
CAUTION :


STORY ;
迷宮のようなカスバの中を、ベールをかぶった踊り子の少女が人々の間を急ぐように縫っていく。彼女が目指すのは、香辛料の市場(スーク)の片隅の小さな店。胡散臭い不思議な品々を商う薄暗いその店の主はまだ若い謎めいた男。少女はその男に淡い恋心をいだいていた。 ある日男は、子ども扱いしたことに腹をたてた少女をなだめるためにか、店の奥から小さな薔薇色の小瓶をもってくる。男の故郷と同じところから来たという小瓶。彼がその栓をはずすと、何万という薔薇が一気に開花したような香りが薄暗い店に立ちこめる。小さな瓶に封じ込められていたのは、モロッコの薔薇の香り。遠い目をした男は、震える少女の肌に手ずから香水をつけてゆき、彼女の未来を予言する不思議な言葉をつむぎ出す――。
作品のご紹介&感想
「文章に癖がある」・「短編もしくはSS」・「男性年上」・「ほろ苦い」という条件のうち、三つ以上満たす作品というリクエストをいただきました。あります、知っています、あるんです。しかし、それでいて、拙宅のコンセプト、ロマンチシズムとエロチシズムを快く刺激する 作品というと、ひじょーに難しかったです。なにしろ、つい先日、私メが知っている、その条件を満たす数少ないオンライン小説の一つをご紹介したばかりでしたから。ほろ苦さとエロスとの両立は難しいのでしょうか。難しいでしょうねえぇ・・・おそらく。
さて、そんな中、ついにこの作品に思い当たりました。この作品でしたなら、もう、条件をばっちりクリアしております。完璧な・・・はずです。しかし、これまた、実はすでに某所でご紹介済みの作品なのです。既読でしたら、お許しくださいませ~。
官能的な香り(香水)というのは、確かに存在します。そして、官能的な香り(雰囲気)のする作品というのももちろんあります。しかしながら、文章作品世界で、ここまで読者にその官能的な香りそのものと雰囲気を疑似体験させることができた作品というのも、そうそうないのではないかと思います。
厳しい気候、乾いた風、市場(スーク)の喧騒、迷宮のようなカスパ、それらは、それほど言葉を費やされたとは思えないのに、その情景と音、温度は、確かに読者に伝わってくるのです。そして、外に比べればひんやりと涼しく薄暗い店の中で、男の指が少女の肌をなぞった時、その一滴の薔薇の香水が、どれほど香り高く、どれほど芳醇に、官能的にたちこめたかも・・・・。
読者にここまで、それを感じさせる文章を書かれる作者さまですので、その筆力のすばらしさはもう言うまでもないでしょう。ロマンスは苦手分野だとおっしゃる作者さまですが、だからこそでしょうか、色恋を全面に押し出さないそのさじ加減が絶妙でした。苦手と敬遠なさらないで、ぜひまたロマンス系の作品を読ませていただきたい!そう思わずにいられないオンライン小説でございました。
短い作品です。余り詳しくご紹介すると、これから読まれる皆様のお楽しみをそぐことにもなりかねません。薔薇の香りがたちこめる中、男の口から語られた少女の未来とは何か、少女の淡い恋はどうなったのか、また、リクエスト条件のほろ苦さとは何か、それはぜひ、お読みになって確かめてくださいませ。
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