ながい、ながい、初恋
春の学園もの特集 第2弾

GENRE : オンライン小説 恋愛小説R18
SITE NAME : おとなみ館
http://www014.upp.so-net.ne.jp/otonamikan/
MASTER : 新 香 (しんこ) 様
CAUTION :


STORY ;
二人が出会ったのは高校の入学式の日だった。小柄だが、華やかで明るいオーラのある人懐っこい勝光に美鳥は一目で恋をした。しかし、大人しくて目立たない自分をよくわかっていた彼女はことさらに彼に近づこうとはせず、遠目に彼を憧れをもって見つめるだけだった。二年になり同じクラスになると、隣の席になった勝光はしきりに美鳥に声をかけてくる。どぎまぎしながらも、勝光に宿題を見せるために成績が上がり、勝光が弁当を褒めるので料理の腕もあがった。やがて、彼の母親が入院したことを知った美鳥は、勝光の弁当もつくろうかと申し出る。最初は辞退した勝光も、彼を心配する美鳥の言葉に最後は「なんか、お母さんみたいだ」と泣き出しそうな顔で彼女の言葉を受け入れる。この一言で、その後の美鳥の在り方は決まった。
母親の葬式で、彼女の肩に顔を埋め、子どものように泣きじゃくった勝光をおずおずと抱きしめ、慰める美鳥。母の死後、勝光はことさら美鳥に甘えるようになった。周囲も勝光も、そして美鳥自身も、美鳥は勝光のお母さんのようなもの―という認識を深めていく。そんな二人の関係は、勝光に下級生の彼女ができても変わらなかった。
しかし、思いがけないことが重なったせいで、美鳥はあらためて勝光への思いを自覚する。彼への感情が恋愛なのか憧れなのかどんな種類の好きなのか、そんなことはわからなかった。ただどうしようもなく勝光に惹かれていることだけはたしかだった。
その後、美鳥は彼女なりのやり方で、その思いに身を投じていく―――。
作品のご紹介 :
はじめて新香様のサイトへおじゃまして、この作品のタイトルを見たとたん、もう即行ページを開いておりました。物語の内容を容易く読者に感じ取らせながらも、それでいて切ない情感がにじむこのストレートなタイトルに 私はまず、ヤラレました。(笑)タイトルに読点 「、」 が入る所なんか、特にイイです。そして、作品の内容も、タイトルに釣られた?私メの期待を決して裏切らず、長く切なく、ゆっくりと、その思いをかみしめるように綴られる初恋の物語を存分に堪能することができました。
今時の恋愛系のオンライン作品では珍しいともいえる三人称視点で描かれた物語は、非常に落ち着いた印象を受けました。このスタイルで作品を描かれる作者さまはどちらかといえば、小説を書き慣れた力量のある作者さまが多いのですが、この作者さまも例外ではなく、長い読書歴でこの文体に慣れていた私メとしては安心して読み進むことができました。そして、その三人称の文章・文体は、この物語にぴったりであり、読んでいて非常に心地よいのです。キャラとストーリーを客観的にみつめながら語るそれは、この情感があふれる物語を決して情緒過多には陥らせません。一見、淡々と訥々として語られるストーリー、それでも読者は行間に滲み出る情感と余韻を感じ取らずにはおられず、この物語に引き込まれていきます。おそらくは、三人称の文体を操る作者さまの巧さが、読者にこの作品を楽しむに最適で微妙、そして絶妙な距離感を与えてくれているせいではないかと思います。こういう作品は中々ありません。
一人称視点に比べて読者の感情移入が容易くはないといわれている三人称視点ですが、そんな客観的で冷静な文体だからこそ一旦作品に引き込まれた読者のキャラや物語への感情移入は大きいです。この作品のヒロインは文体にふさわしく?性格も温厚で落ち着いておりますが、だからこそ、そんな彼女の心情の揺らぎは、抑えた筆致で語られるからこそ一層印象的で、読んでいて胸に迫るものがあります。お伝えするのは難しいのですが、ともかくも、この秀逸な文章がこの作品の大いなる魅力の一つなので、ぜひそれはお読みいただいてお確かめくださいませ。
いじらしくも健気、そしてしっかりもののヒロインは、非常に好感が持てます。彼女が恋する無邪気な少年のような魅力をいつまでも持ち続けるヒーローも母性本能?を刺激されるというか、非常に魅力的なのですが、そんな華やかな彼よりも、読者はこの控えめで地味ともいえるけれども、切なくいじらしく、ひたむきで真摯なヒロインに、すっかり肩入れしてしまうに違いありません。
誰にでも訪れるであろう初恋。誰もが一度は、いえ一度だけ経験するその甘さと切なさを忘れられないからこそ、それを語った物語は古今東西枚挙にいとまがありません。けれども初恋を忘れられないのと、初恋の人だけを長く思い続けることは全く別の話です。乙女な時代には脳内で初恋を温めていても、長じて世界が広がり、異性との出会いが多くなれば、初恋の人は徐々に思い出の中の住人となり、新しく知り合った目の前の人に惹かれてゆくものです。青春の日々、若者は恋をせずにはいられないように神さまがつくったのですから仕方ありません。他の異性と知り合う機会が少なかった昔の時代ならともかく、現実問題としてたった一人の初恋の人を長く思い続けることが難しいことは、ある程度の年の人間ならば皆知っていると思います。まして、それが片恋であればなお更です。
大昔、母親だか、親戚のお姉さんが、初恋は実らないものよと私に言ったことがあります。あの時私は幼い初恋の真っ最中でした。その後、何百回となく目や耳にすることになるフレーズでしたが、初めてそれを聞いた私は、なんで、なんでと必死で問い詰めました。その時の返答がどのようなものだったかは覚えておりません。ただ、理解できず、納得がいかなかったのだけは覚えています。今ならその意味もわかります。(笑)
さて、そんな初恋の酸いも辛い?も知り抜いた、すれた大人の読者である私メが読んでも、この長い初恋の物語は、聊かの違和感や疑問を感じることなく没頭できました。初恋を題材としたオンライン作品に多いご都合主義的な通り一遍の描きかたでは、ドリームに走りすぎて面白みが感じられないことが常なのですが、この作品は違います。ヒロインがなぜヒーローに恋をし、その恋を忘れることも捨てることもせずに、かくも長くこの初恋に身を投ずるに到ったのか。現実には難しいその設定を、作者さまは見事な説得力とリアティをもって読者を納得させてくださいます。8年にわたるヒロインの恋を、季節と年月を丁寧に織り込みながら綴られた物語は、落ち着いてはいても、決して平坦ではありません。ヒロインにライバル心をむき出しにするヒーローの恋人やら、ヒロインに心を寄せるヒーローよりずっと大人で漢前な男性など、物語を盛り上げるキャラも不足がなく、はらはらどきどきあきることがありません。
二人の出会いが高校の入学式であり、その高校時代に多くを費やした物語でもあるので、学園もの特集としてご紹介させていただきます。制服に身を包んでいた青春の日々、切ない初恋や片思いの思い出のある皆様にぜひぜひ、おすすめの作品でございます。
新香様のサイトはこちら


しかし、思いがけないことが重なったせいで、美鳥はあらためて勝光への思いを自覚する。彼への感情が恋愛なのか憧れなのかどんな種類の好きなのか、そんなことはわからなかった。ただどうしようもなく勝光に惹かれていることだけはたしかだった。
その後、美鳥は彼女なりのやり方で、その思いに身を投じていく―――。
作品のご紹介 :
はじめて新香様のサイトへおじゃまして、この作品のタイトルを見たとたん、もう即行ページを開いておりました。物語の内容を容易く読者に感じ取らせながらも、それでいて切ない情感がにじむこのストレートなタイトルに 私はまず、ヤラレました。(笑)タイトルに読点 「、」 が入る所なんか、特にイイです。そして、作品の内容も、タイトルに釣られた?私メの期待を決して裏切らず、長く切なく、ゆっくりと、その思いをかみしめるように綴られる初恋の物語を存分に堪能することができました。
今時の恋愛系のオンライン作品では珍しいともいえる三人称視点で描かれた物語は、非常に落ち着いた印象を受けました。このスタイルで作品を描かれる作者さまはどちらかといえば、小説を書き慣れた力量のある作者さまが多いのですが、この作者さまも例外ではなく、長い読書歴でこの文体に慣れていた私メとしては安心して読み進むことができました。そして、その三人称の文章・文体は、この物語にぴったりであり、読んでいて非常に心地よいのです。キャラとストーリーを客観的にみつめながら語るそれは、この情感があふれる物語を決して情緒過多には陥らせません。一見、淡々と訥々として語られるストーリー、それでも読者は行間に滲み出る情感と余韻を感じ取らずにはおられず、この物語に引き込まれていきます。おそらくは、三人称の文体を操る作者さまの巧さが、読者にこの作品を楽しむに最適で微妙、そして絶妙な距離感を与えてくれているせいではないかと思います。こういう作品は中々ありません。
一人称視点に比べて読者の感情移入が容易くはないといわれている三人称視点ですが、そんな客観的で冷静な文体だからこそ一旦作品に引き込まれた読者のキャラや物語への感情移入は大きいです。この作品のヒロインは文体にふさわしく?性格も温厚で落ち着いておりますが、だからこそ、そんな彼女の心情の揺らぎは、抑えた筆致で語られるからこそ一層印象的で、読んでいて胸に迫るものがあります。お伝えするのは難しいのですが、ともかくも、この秀逸な文章がこの作品の大いなる魅力の一つなので、ぜひそれはお読みいただいてお確かめくださいませ。
いじらしくも健気、そしてしっかりもののヒロインは、非常に好感が持てます。彼女が恋する無邪気な少年のような魅力をいつまでも持ち続けるヒーローも母性本能?を刺激されるというか、非常に魅力的なのですが、そんな華やかな彼よりも、読者はこの控えめで地味ともいえるけれども、切なくいじらしく、ひたむきで真摯なヒロインに、すっかり肩入れしてしまうに違いありません。
誰にでも訪れるであろう初恋。誰もが一度は、いえ一度だけ経験するその甘さと切なさを忘れられないからこそ、それを語った物語は古今東西枚挙にいとまがありません。けれども初恋を忘れられないのと、初恋の人だけを長く思い続けることは全く別の話です。乙女な時代には脳内で初恋を温めていても、長じて世界が広がり、異性との出会いが多くなれば、初恋の人は徐々に思い出の中の住人となり、新しく知り合った目の前の人に惹かれてゆくものです。青春の日々、若者は恋をせずにはいられないように神さまがつくったのですから仕方ありません。他の異性と知り合う機会が少なかった昔の時代ならともかく、現実問題としてたった一人の初恋の人を長く思い続けることが難しいことは、ある程度の年の人間ならば皆知っていると思います。まして、それが片恋であればなお更です。
大昔、母親だか、親戚のお姉さんが、初恋は実らないものよと私に言ったことがあります。あの時私は幼い初恋の真っ最中でした。その後、何百回となく目や耳にすることになるフレーズでしたが、初めてそれを聞いた私は、なんで、なんでと必死で問い詰めました。その時の返答がどのようなものだったかは覚えておりません。ただ、理解できず、納得がいかなかったのだけは覚えています。今ならその意味もわかります。(笑)
さて、そんな初恋の酸いも辛い?も知り抜いた、すれた大人の読者である私メが読んでも、この長い初恋の物語は、聊かの違和感や疑問を感じることなく没頭できました。初恋を題材としたオンライン作品に多いご都合主義的な通り一遍の描きかたでは、ドリームに走りすぎて面白みが感じられないことが常なのですが、この作品は違います。ヒロインがなぜヒーローに恋をし、その恋を忘れることも捨てることもせずに、かくも長くこの初恋に身を投ずるに到ったのか。現実には難しいその設定を、作者さまは見事な説得力とリアティをもって読者を納得させてくださいます。8年にわたるヒロインの恋を、季節と年月を丁寧に織り込みながら綴られた物語は、落ち着いてはいても、決して平坦ではありません。ヒロインにライバル心をむき出しにするヒーローの恋人やら、ヒロインに心を寄せるヒーローよりずっと大人で漢前な男性など、物語を盛り上げるキャラも不足がなく、はらはらどきどきあきることがありません。
二人の出会いが高校の入学式であり、その高校時代に多くを費やした物語でもあるので、学園もの特集としてご紹介させていただきます。制服に身を包んでいた青春の日々、切ない初恋や片思いの思い出のある皆様にぜひぜひ、おすすめの作品でございます。
新香様のサイトはこちら


